効果的な是正処置とは?火消しの繰り返しに終止符を打とう

目次

はじめに

この記事は、IATF 16949やJIS Q 9100で品質問題の是正処置が必要な中、以下の関心をお持ちの方に向けて作られています。

  • 不具合が起きるたびに“火消し”対応で手いっぱい。根本的に解決できないまま…
  • 同じ問題がまた発生してしまい、顧客からの信頼も社内のモチベーションも下がっている…
  • 責任の押し付け合いになることもあり、建設的な改善につながらない…

このようなご相談を受けることは多く、もしこうした悩みをお持ちでしたら、それは決して珍しいことではありません。私もこれらの悩みに苦しんだ経験がありますが、あなたも同じような悩みをお持ちでありませんか?品質マネジメントシステムを運用している企業でも、問題(不適合)に対する“是正処置”が十分ではなく、“とりあえず修正”だけで終わってしまうケースは少なくありません。

しかし、もし効果的な是正処置を運用できるようになれば、

  • 不具合のたびに焦って残業を繰り返すような“火消し”対応が減り、社内外から「やっぱり対応がしっかりしているね!」と高評価される。
  • 同じ問題が再発しなくなることで、顧客満足度が上がり、追加受注やブランド力向上にも繋がる。
  • 建設的な問題解決にフォーカスできるため、社員のモチベーションやスキルも上がり、会社全体が成長していく。

そこで、このようなお悩みをお持ちの方に向けて、IATF 16949やJIS Q 9100での効果的な是正処置の進め方を説明します。もちろん、ISO 9001の是正処置にも活用できる内容です。

当社は、現役のIATF 16949/JIS Q 9100審査員資格保有者による自動車・航空宇宙産業に特化したコンサルティングやトレーニングサービスを提供しています。これまでの経験から、「繰り返し起こる問題」に根本的に対処しないままだと、顧客や現場スタッフの信頼を損ね、会社全体の成長機会も逃しがちになると痛感しています。

日々の忙しさの中で、「将来を見据えた本質的な是正処置」に目を向けられるのは素晴らしいことです。本記事を参考に、IATF 16949やJIS Q 9100で求められる是正処置プロセスを見直し、ぜひ“火消し”の繰り返しから脱却してください。

IATF 16949、JIS Q 9100の詳細については、以下の記事をご確認ください。

先にまとめると以下となります。

STEP
迅速な初期対応

まず、状況の悪化を防ぎ顧客などを保護するため、迅速な初期対応が必要です。作業や出荷の停止、影響を受けている顧客への連絡を早急に行いましょう。

STEP
問題の正確な把握

次に、問題の原因を正確に特定するために、関連データを収集・分析した上で、状況の定義(何が、どこで、いつ、どのように)と影響にわけて明確にすることお勧めします。

STEP
根本原因の分析

その上で、問題の根本原因を追求する「なぜなぜ分析」や、問題の原因と結果を整理する「特性要因図」の手法を用いて根本原因を分析しましょう。

STEP
再発防止策の検討と実施

さらに、分析された原因からリスクマネジメントに基づいた再発防止策を検討し実施しましょう。具体的な分析手法として、IATF 16949で要求されているFMEA(故障モード影響解析)が利用可能です。顧客が影響を受けた場合、検討した再発防止策は顧客から了承を得てください。

STEP
有効性の確認

最後に、これまでの分析と処置の有効性を確認します。有効性が十分に確認できない場合、根本原因分析に戻ります。品質マネジメントシステム全体の有効性を評価する内部監査で是正処置の有効性も確認しましょう。

当社の詳細については、「会社概要」でご紹介しておりますので、ご興味があれば併せてご覧ください。

では、ここから詳しく見ていきましょう。

是正処置の意味

  • 是正処置とは「不適合の原因を除去して再発を防止するための処置」です。
    ここで不適合とは「要求事項に適合してない状態や事象」を意味します。
  • 一方、似た言葉に修正処置があります。修正処置とは「不適合を修正して適合した状態に戻すこと」です。
  • 是正処置と修正処置の違いは、原因分析と再発防止を実施しているかどうかです。
    時間的な視点も今のことだけなのか、それとも将来を見据えたことなのかの違いがあります。
  • 修正処置は「当面の火消し」、是正処置は「将来にわたる再発防止策」です。

是正処置の目的

  • 製品・サービス・業務プロセスを改善し、顧客や従業員の満足度を向上させるために、発生した問題(不適合)が再発しないように対策をとることです。
  • 発生した問題(不適合)の再発を繰り返すと、「問題を解決できない企業だ」と顧客や従業員からの信頼を失うリスクも大きくなります
  • 一方、是正処置のプロセスをきちんと回すことで、「ここは何か問題があってもすぐ根本解決してくれるから安心だね」と周囲から高く評価されるチャンスになります

IATF 16949やJIS Q 9100での効果的な是正処置の進め方

STEP
迅速な初期対応
  • まずは、さらなる状況の悪化を防止し、影響を受けている顧客などを保護するために迅速な初期対応が必要です。
  • IATF 16949, JIS Q 9100は問題(不適合)によって起こった結果に対処することを要求しています。
  • 初期対応としては、問題への応急的な処置として即時の封じ込めを行いましょう。
  • 問題の影響をさらに拡大させないように、問題の発覚からタイムリーに以下を完了させましょう。(顧客によっては、問題の発覚から24時間の対応完了が要求されている場合もあります)
    • 問題となっている作業プロセスの停止、出荷の停止、既に作られた製品の特定する。
    • 影響を受けている顧客などに状況について連絡する。

多くの企業で、この初期対応の遅れが大きなクレームに発展する事例を見かけます。特に自動車・航空機産業では「顧客保護」や「二次被害防止」が最優先。迅速な初期対応で被害拡大を食い止めましょう。

STEP
問題の正確な把握
  • 次に、この後のステップである原因の特定を正確に進められるようにするため、問題(不適合)を正しく定義し、明確化します。これにより、関係者で共通の理解を持てるようにもなります。
  • IATF 16949、JIS Q 9100は問題をレビューし、分析することを要求しています。
  • 状況の定義(何が、どこで、いつ、どのように)と影響にわけて、事実や数字に基づいて客観的に文書化し、問題を明確化しましょう。
  • 状況や影響を把握するために、関連するデータを収集し、統計的な分析を行います。これにより、正確な問題定義が可能となります。

“問題の定義”が曖昧だと原因追究も曖昧になります。しっかり数字や証拠を取りまとめて、関係者全員が同じ認識をもてるようにしましょう。

STEP
根本原因の分析
  • 続いて、恒久的な対策を実施し再発を防止するため、問題(不適合)の根本原因(真の原因)を特定します。
  • IATF 16949、JIS Q 9100共に不適合の原因を明確にすることを求めています。さらに、IATF 16949は予め定めた方法論で原因の分析を実施することが必須となっています。社内で標準化した手順を使い、誰が見ても一貫した原因分析ができるようにしましょう。
  • 問題の根本原因を追求する「なぜなぜ分析」や問題の原因と結果を整理する「特性要因図」の手法を用いて真の原因を正確に明らかにしましょう。

十分な根本原因が分析されておらず、起きた問題(不適合)を除去するだけの修正処置に留まっている事例を見かけることがあります。
注意したいポイントですね。

STEP
再発防止策の検討と実施
  • ここで、原因に紐づいた処置を実施し、完全に問題(不適合)を解決させることを目指します。
  • 問題が再発せず、他の製品やプロセスでも発生しないように、原因分析に基づいた処置(水平展開を含む)を検討して実施することが要求されています。
  • リスクマネジメントに基づいて、再発防止につながる処置を検討して実施しましょう。具体的な分析手法として、IATF 16949で要求されているFMEA(故障モード影響解析)が活用可能です。
  • もし顧客が影響を受けた場合、再発防止策は顧客に説明をして了承を得ましょう。
STEP
有効性の確認
  • 最後に、これまでの分析と検討が正しかったのかを確認します。もし誤っていても、原因分析のプロセスに再び戻ることで、恒久的な再発防止策にたどり着くことができます。
  • 実施が計画されたすべての是正処置の有効性をレビューすることが要求されています。
  • 処置担当者と期限を定めて、実施が計画されたすべての処置を確実に実施し、再発の防止と他のところでも発生がないか有効性を評価しましょう。
  • 加えて、とられた処置の有効性が十分かを内部監査を通じても確認しましょう。内部監査は品質マネジメントシステム全体の有効性を評価するためのものであり、是正処置の確認はその一部に含まれます。

「対策したつもり」で終わらず、現場レベルで機能しているかを確かめることが大事です。ここまでやることで、「あの会社はきちんと最後まで対策を追うから安心」と見なされるようになります。

その他の重要なポイント

是正処置の進め方に加えて、処置を効果的に実施するためには以下の側面も重要になります。

担当者を決める

  • 各ステップにおける担当者は明確にしましょう。
  • 是正処置を効果的に運用している企業は、この点がしっかりとできています。これにより、遅れなく処置を進めることができます。
  • 誰が何を行うかを具体的に示し、作業の目的と内容を共有しておきましょう。スキルや経験に基づいて最適な担当者を選び、無理のない業務負荷で割り当てましょう。

担当者だけでなく、トップマネジメントも是正処置が効果的に実施されているかを確認することが重要です。実際、マネジメントレビューでレビューすることが要求されています。

スケジュールと期限の合意

  • 各ステップの実施時期や全体のスケジュールを設定し、期限を明示しましょう。
  • 処置が計画的に進められるようになり、必要な人員、設備、費用などを確保し効率的に配分できるようになります。進捗を把握することで、処置の修正や追加の早期対応ができるようになります。
  • いつまでに各ステップを100%完了させるのかを決めて、関係者で合意しましょう。

社内トレーニングの提供

  • 体系的な是正処置プロセス自体に関する社内トレーニングを定期的に行い、プロセスに関わる全員が共通理解をもてるようにします。
  • 問題の再発を防止し、効果的で無駄のない是正処置を実施する社内文化を醸成することができます。
  • 是正処置プロセスに精通している専門家を講師に任命し、社内トレーニングを提供しましょう。

当社のトレーニングサービス
自動車・航空宇宙産業をはじめとした品質マネジメントシステムの専門知識を、わかりやすく・現場に落とし込める形で提供します。担当者育成から継続的なフォローまで、ぜひお気軽にご相談ください。初回30分の無料相談をご提供しています。

次のステージへ – 認証取得以上の価値を生み出すには

IATF 16949やJIS Q 9100の導入は「お客様からの要求に対応する」だけではなく、自社の競争優位を築く絶好の機会になります。

  • 品質管理体制を整えることは、市場からの信頼獲得につながり、結果として新規ビジネスの拡大やブランド価値向上にも寄与します。
  • 当社では、審査員としての視点+認証機関責任者としてのマネジメント経験を掛け合わせ、単なる手順や書類づくりだけの「形だけの認証」で終わらない「経営戦略としての品質保証体制づくり」を支援しています。
  • 認証を取った“後”の運用こそ本番。継続的改善が回り続ける仕組みを作り込むことで、不具合低減・コスト削減・ブランド向上などのメリットを最大限に活かせます。

当社では、以下のような総合サポートを行っています。

  1. コンサルティングサービス
    • 審査員かつ認証機関責任者としての経験をフルに活かし、最短・最適な認証取得とリスク最小化を支援
    • 「現場にフィットした品質マネジメントシステム」の構築で、品質をコアとした競争優位を確立
    • 認証取得だけで終わらず、売上向上・リスク低減・ブランド強化の三拍子を狙える包括的な品質経営サポート
  2. トレーニングサービス
    • 「机上の理論」に偏らず、実務レベルで使える内容を重視
    • 企業文化を尊重しつつ、現場力を高める人材育成プログラムを提供
    • IATF 16949やJIS Q 9100への理解を深めながら、短期成果と長期的な企業価値向上を両立
  3. 内部監査サービス
    • 現役の審査員が内部監査員としてアウトソーシング対応
    • 担当者の作業負荷を大幅軽減し、外部審査での指摘リスクを最小化
    • 監査員育成にも注力し、将来的に社内完結できる監査体制を構築
  4. サプライヤーマネジメントサービス
    • 重大リスクを未然に防止し、サプライチェーン全体の品質基盤を強化
    • 生産効率や納期も犠牲にせず、サプライヤーが自律的に改善を継続できる仕組みを構築
    • 認証機関との連携も含め、一括でサポートし、OEM/Tier1の業務負担を大幅に軽減

戦略的に競争優位を獲得することが重要な時代です。IATF 16949やJIS Q 9100導入は“コスト”ではなく“投資”と考えて、長期的なリターンを最大化していきましょう。

当社の詳細については、「会社概要」からご覧いただけます。

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まとめ

是正処置プロセスを改善できるように、IATF 16949やJIS Q 9100での効果的な是正処置の進め方を解説しました。

STEP
迅速な初期対応

まず、状況の悪化を防ぎ顧客などを保護するため、迅速な初期対応が必要です。作業や出荷の停止、影響を受けている顧客への連絡を早急に行いましょう。

STEP
問題の正確な把握

次に、問題の原因を正確に特定するために、関連データを収集・分析した上で、状況の定義(何が、どこで、いつ、どのように)と影響にわけて明確にすることお勧めします。

STEP
根本原因の分析

その上で、問題の根本原因を追求する「なぜなぜ分析」や、問題の原因と結果を整理する「特性要因図」の手法を用いて根本原因を分析しましょう。

STEP
再発防止策の検討と実施

さらに、分析された原因からリスクマネジメントに基づいた再発防止策を検討し実施しましょう。具体的な分析手法として、IATF 16949で要求されているFMEA(故障モード影響解析)が利用可能です。顧客が影響を受けた場合、検討した再発防止策は顧客から了承を得てください。

STEP
有効性の確認

最後に、これまでの分析と処置の有効性を確認します。有効性が十分に確認できない場合、根本原因分析に戻ります。品質マネジメントシステム全体の有効性を評価する内部監査で是正処置の有効性も確認しましょう。

是正処置をしっかり機能させれば、“火消し”に追われる日々から解放され、顧客や従業員の信頼を着実に高めることが可能です。当社では、認証機関としての視点や豊富なコンサル実績を活かし、自動車・航空宇宙産業を中心に「品質」を競争優位へと転換するサポートを提供しています。是正処置プロセスの見直しやFMEA導入などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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